<「悪夢幻想会」の血を受け継ぐのか>
今から2年半前の2006年の暮れも間近い深夜、トラウマイベントになるだろうことが予想されたイベントが行われた。
当時自分でつけた取材記事のタイトルと注意書きが以下の通りである。
【12/16(土)血沸き肉踊る 悪夢実演会】(メールマガジンMドリーム第173号より)
注 心臓の弱い方は読まないで下さい
その血を受け継いで、
「・より耽美に
・より幻想的に
貴方を悪夢へと誘います!!」
と先日7/27(日)に開かれたのが、「
悪夢幻想会」だった。
聞けばイベントオーガナイザーとしては、
残酷天使月花が入っているのは当然ながら、会場の
新宿ロフトプラスワンのフロア担当で、SM・フェティッシュ系のイベント開催を運営している
KENTARO TAJITSUまでがプロデューサーとして参加等、これまでとは発想の異なるスタッフが企画参加しているらしい。
しかも、それまで深夜に行われ18歳未満不可という以前の 「悪夢幻想会」とは異なり、日曜日の夕方から年齢制限のないイベントとして、さらにはドレスコード割引のチェックをしっかりフロントで行うという。
<いきなりの忍者、呪念>
場内の観客の中にはフェティッシュなマスクのような付けまつげ顔、ボンデージ、金髪メイド、浴衣、狐面、ペイント顔等DJ:SiSeN の姿を見ただけでも、まるで
THE GATEのようなフェティッシュ系のイベントを思わせた。
若い観客、外人の観客、若い観客・・・、何だか私自身が平均年齢を押し上げている感があった。
そんな場内の雰囲気で始まったのが全身黒づくめ四人の男性による激しいダンスだった。
彼らは「
SHINOBI-TRY」
内二人は覆面で顔まで隠し、槍、ヌンチャク、扇等の小道具を使いながらの体技を見せる。
最後は狭い場所でのバク転を決めるなどまさに”忍者パフォーマンス”だった。
エレキギター特有のギューン、ベースのブンボンというお腹の底に踏み込まれるような音と共に、多種類のドラム音が飛び込んできた。
ドゥームロックに怨念を重ねる女子三人のバンド「
マダグラ呪念」

の登場である。
その歌声と音はうまく表現できないので、彼らのアルバム「
マダグラ呪念/念の音」の腰巻一枚の妊婦らしい女性が逆さ吊りにされているカバー画像

と、その収録タイトル「
ソドムの復讐と服従の市」等で想像して頂ければ 確かに「悪夢幻想会」にふさわしかろう。
(個人的にはドラムスがお気に入り、故ジーン・クルーパーを思い出した)
<ゴシック系責め、かつてない歌声>
(おや、おや、これでは・・・ちょっと今日はSM系のイベント記事にはしにくそう)
と思っていたら、黒衣にいびつなドクローつまり死神スタイルが、首輪付きの赤いセパレーツの女性を引き出してきた。
抗う彼女に鞭を入れ、その柄先を口に突っ込み・・・と、何だか私としては見慣れている舞台のせいかほっと一息つけた。
死神スタイルは
ゴシック系責師SHIMAmalphasだった。
さらに特設花道に向かって逆さまに彼女を寝かせて蝋燭を浴びせたかと思うと、後ろ手に縛った彼女を舞台のそでから下ろしたので、これから会場内奴隷散歩か、それとも下から花道へ上がって得意の吊りにでも入るのかと思ったら、今回はそれで彼のショーは終わりとなってしまった。
何だか少し物足りなく感じたのは、職業病なのだろうか。
代わって今度は、黒衣と言ってもレース状のドレススタイルで、しかもかなり長身の者が現れた。
何だか舞台が目いっぱいその姿に占められてしまったような気がした。
だが、本領はその声である。
イギリス、イタリアのルネッサンス〜バロックまでの歌曲や民謡を主なレパートリーとしてコンサートホール、教会、ライヴハウスなど様々な場所でステージを行い、オペラ歌手としては、ヘンデルのオペラ「アグリッピーナ」やモンテヴェルディの「オルフェオ」等に出演と言うだけあって
「Selia」(セリア)の歌声は、かつて新宿ロフトプラスワンのこのようなイベントで聞いたことのない響きのあるものだった。
しかも、歌だけでない。
続いて半裸、首輪・鎖付きの男が現れたが、
「Selia」は彼を引きずりまわし、花道ではその身体を貪るごとくからみを見せた。
そして思いをこめて鞭打ち、ハイヒールで足蹴にするところは、Sの女王のごとくであった。
<美味しい虫デザート、白布拘束>
スポットが花道に当たると、ピンクのメイド服が似合う小柄な女性が登場した。
手にしているのはビンと金属製の小さな容器である。
彼女は、その容器に入っている物をビンにあけ、今度はそれを持って観客の中へと巡っていった。
それは、あたかもマジシャンが、これは正真正銘の本物ですと手品に使うネタを見せにまわる姿に似ていた。
さらに、透明な容器を持ち出し、これもまた同様に見せに回った。
その都度あがる、観客の悲鳴にもにた声と、少し逃げるような動作にそのタネがただものではないことがわかる。
もう一つの容器が持ち出されてくると、容器が花道に置かれた瞬間、運命を知ったのか容器の中に入ったものが逃げ出そうとした。
最後に持ち出された皿には生クリームとババロア風のものが美味しそうに山盛りとなっていた。
だが、
先ほどお披露目された大型の昆虫、蛆虫に似た昆虫、さらには逃げ出しそうになった生きのいいオケラのような昆虫が、その皿の上にふりかけのようにまかれてクリームの沼の中から何とか逃れようともがいていた。
虫食いと言えば何と言っても佐々木孫悟空を思い出してしまうが、このような
可愛い女性が、レストランで出されたデザートのごとく美味しそうに食するのもいいもの?だ。
食蟲ロリータ「姫」は、見事完食である
残酷天使月花も出演と聞いていたのだが、それまでの所業を思うと、まだ陽が落ちて間もないこのイベントではヤバイのではないかと思っていた。
だが、その舞台を期待してた観客が多かったのだろう。
それまでざわめいていた場内が彼女の登場と共にシーンと静まり返った。
ようやく責められるM女性の肌が見えたかと思ったらそれは背中だった。
当然正面を向けば胸の膨らみが露出することになるのだが、それをたくみに白い布で隠してしまう。
そして、その
白い布が、衣装というより拘束具の代わりとなってM女の身体に巻き付いていく。
花道では、さらに白い布が縄代わりにも使われM女の身体を左右に開いていった。
今日はM女の身体に植えられたような蝋燭でさえ、神々しく感じさせられた。
それは
隠されるエロスだったのだろうか。
<本日一番の妖しさ、音波マッサージ>
蝶ネクタイ、白シャツ、半ズボンの坊や風がソファに座ってなにやら怪しい手の動きをしている。
そこへ
黒いマントで全身を隠した者が、まるで折檻するようにつかみかかった。
二人がどういう関係なのか定かではない。
だが、坊や風を足蹴にしたり、着ている物を脱がせたりするところを見ると、どうやら黒マントに主導権があるらしい。
黒マントの下は、Tバック1枚、そして相手の坊や風もブリーフ1枚。
ベートーベンの「熱情」とシューベルトの「アベ・マリア」がバックに響き渡る中、
「蘭丸× Sou」(
N-stage)の二人は、
本日一番の妖しさを花道で見せていた。
正直言って、この音楽が一番理解できなかった。
せっかくの歌姫の声が変換され、エレキを飛び越したような音楽。
ところが、そんな私の感覚とは異なるのだろう、彼ら「
堕空」

の演奏の前に詰め掛け、身体をゆすってリズムに合わせようとする観客がいるのである。
確かに、この言いようのない音の中では、なにやら全身を音波マッサージをされていると思えないこともないのだが・・・
<椅子が宙に浮く、エンタティナー達の新たな表現の場>
さすがのエンタティナーと、トリを飾ったのは「
ミラ狂美」である。
ただし、写真でも赤い縄を操っている姿が見える

がSMプレイは一切ない。
そう、「
ミラ狂美」はマジシャンなのである。
次々と指の間から炎をきらめかせ、金属の玉を引力に逆らうように自在に動かしてみせる。
よく見かけるクロスのかかった椅子を、いとも簡単に宙に浮かせて

見せた。 画像の赤い縄は、こうして左右に渡した縄を、あちこちで切ってはつなぎ、さらに切ってはつなぐというマジックの場である。
第一の圧巻は、赤い縄をミラ狂美自身の身体で背中からお腹へ通り抜けさせる手品だ。
金属の輪、これも観客に触らせ、切れ目のないことを確認させた後、最終的には3本の輪を簡単につなぎ、また抜いていく。
最後を飾ったのは、まるでふだんミラ狂美がM女に対して行う残酷な責めにも似ていた。
但し、今回はM女ではなく自身の身体である。
あらかじめ細い紐を口中にふくみ、さらに口の中へ新聞紙で試し切りをしたカミソリの刃を何枚も入れていった。
そして、紐を曳いていくと、何とその紐にカミソリの刃が、網にかかった魚のようにつながって出てきたのだった。
各出し物の合間には、
ボンデージスタイルの女性がダンスを披露し、彼女達がお立ち台よろしく花道で踊れば

、それにつられて観客も参加。
ブースも、「
てふてふ」という付けまつげショップ、
「コルセット職人PureOne」」のコルセットショップ」、「
GALVANIC」という「BONE&SKULL ART」ショップ等多彩である。
音のハードシャワーと、個性豊かな出し物。
耽美、幻想を主題に、このイベントがバンドやエンタティナー達の新たな表現の場になるかもしれない。
(文中敬称略)